スタートアップやベンチャー、中小企業で取ることの多い戦略の一つにランチェスター戦略があります。
弱者、強者でそれぞれどのような闘い方をすれば戦局を有利に運べるのかを考える戦略理論の事です。
もともとは第一次世界大戦での航空戦での戦略論から生まれたが、現代では実践的なマーケティング理論として活用されており、同じ武器なら勝敗は兵力数で決まる」という前提をもとにした「強者の戦略」と「弱者の戦略」に分けらます。
今回は筆者自身がどのように自身の事業戦略を考えて、セグメントやターゲットを見据えてランチェスターを組んでいるのか、実例ベースにご紹介します。
目次
ランチェスター戦略は「弱者の戦略」と呼ばれる第一法則と、「強者の戦略」と呼ばれる第二法則の大きく2つに分けられます。
「弱者の戦略」と呼ばれる第1法則は、例えば一騎打ちの状態で、50人と30人が一騎打ちで闘った場合、50人側は20人残り、30人側は全滅します。
つまり戦闘力が同じであれば、兵士の多いほうが勝つというもの
対して、「強者の戦略」と呼ばれる第2法則:集団と集団が狙い打つ状態で、1人で複数の相手を同時に攻撃する広範戦、遠隔戦をイメージしています。
この場合の攻撃力は兵力数の2乗に比例するというもの
ここまでの説明は恐らくランチェスター戦略に関する書籍などでもよく出てくると思います。
ハッキリ言って分かりづらい。
ただ、こんな分かりづらい説明をされる戦略理論が、販売競争に勝つための理論と実務の体系で、世界で最も広く利用されている戦略の1つとなっている事実があります。
戦闘力=兵力の質✕量という考えの戦略で、1位を強者、2位以下をすべて弱者と定義します。
同じ武器なら勝敗は兵力数で決まるという定義をもとにした弱者の戦略、強者の戦略に分けられています。
弱者の戦い方として、以下のような内容のものが挙げられます。
1、局地戦…ビジネスの領域を絞る
2、一騎打ち…1社限定と競合する
3、接近戦…敵ではなく、顧客に接近する
4、一点集中…1点に絞って戦う
5、陽動作戦…競合相手の裏をかく戦法
対して、強者の戦い方としては、
1、広域戦…大きな市場をねらう
2、確率戦…アイテム数を積極的に増やす、新製品を積極的に売り出す
3、遠隔戦…広告などを大々的に行って離れて戦う
4、総合戦…すべての武器、力を総動員して勝負する
5、誘導作戦…こちらの戦いやすい場所に誘導して勝負する
と定義づけられています。
こう書くと何となくイメージが湧きますね。
人的にも金銭面も劣る弱者はマーケットの中でいかに絞ったポイントを狙って取るか、というのは当たり前に思い浮かぶ考えですし、人海戦術が引けて広告費もやたらめったら割ける強者はより大きなマーケットを狙って、大きな成果を創出する動きをする。
これがランチェスター戦略の大まかな概要です。
筆者はフリーランスとして生き抜いて戦うために、このランチェスターの考え方を取り入れ、毎年、早いときは3ヶ月に一回セグメントやターゲットの見直しを図っています。
筆者は2021年現在、独立5年目です。
その5年の中で何度もクライアントとなり得るセグメントやターゲット、いわゆるSTPと呼ばれるフレームワークを用いて見直してきました。
初年度は大手のみでしたし、2年目は大手と年商100億ほどの中堅、3年目は事業会社ではなくコンサルファームやストラテジスト会社に委託としてジョインしたり、と色々と試行錯誤をしています。
もちろんその度に新規開拓の営業をしたり、今までに会った方へアポを取って商談をしたり、営業活動は全てのパイプラインにおいて必要です。
そして、現在は零細企業に絞っています。
それこそ月の売り上げが1000万以下のクライアントを4社抱えて日々動いています。
単価は下がりますがなぜ零細企業に絞ったかが、いわゆるランチェスターの考え方なのです。
コンサルファームやストラテジスト会社へその会社の人間として様々なプロジェクトに関わった際に、ネームバリューというものの大きさを知りました。
今まで経験してきたサラリーマン時代もよく痛感していましたが、独立してから痛感したのは恐らくこの時が初めてです。
正直どう良く見ても仕事が出来るとは言えないコンサルタントやストラテジストに、クライアント企業は人月300万を平気で払うのです。
筆者もそのくらいの人月単価で契約していました。
そのファームやストラテジスト会社はいわゆる強者。
同じセグメントのクライアントにフリーランスとして当たっていては、能力の差異の前にネームバリューで土台にすら乗らない事を大きく痛感しました。
また、契約面の話になりますが、フリーランスでは通らない請負での基本契約など、あっさりと通るのです。
そこには与信やらも勿論ありますが、フリーランスと大手コンサルファームが同じ土台で語られる、そのような場所で事業展開していてはまずいと強く感じました。
そこで、実際に共にプロジェクトにアサインされていたコンサルタントやストラテジストに、どんな会社の案件は断っているの?、と正直に真っ向から聞きました。
今考えると痛いです。
ただ、そこで出てきたのが今の活路でもある零細企業や地方自治体の案件だったのです。
理由は至極明快にお金が出ないから。
筆者はお金を稼ぐことにそこまで大きい興味はなく、単に自分の力で生きていきたいというフリーランスなので、そこは活路になるかなと商工会議所などに顔を出したり、よく分からない小さい展示会などにも顔を出したりしてネットワークを作っていきました。
今現在は前述の通り、零細企業から依頼を受けてストラテジストやビジネスデベロッパーとして日々仕事をしています。
弱者として生きるには、と考えて戦略とまではいかないまでもランチェスターを意識しながら営業活動をした結果だと思います。
単価は安いですが、言っても同年代のサラリーマンの5、6倍は手取りでももらっているので、金銭面でも満足しています。
これが例えばWebデザイナーであれば、得意なカラーやイメージからターゲットやセグメントを考えて、制作物を送って営業、などをすれば弱者として特定のセグメントを囲い込むことができるかもしれません。
完璧なランチェスター戦略ではありませんが、筆者が実際に行った活動として、上記のような動きをして、今現在安定的にお仕事を頂きながら稼業を続けていられます。
上記でWebデザイナーだったら、と書きましたが、様々な業種のフリーランサーが同じような弱者の戦略を取ることができると思います。
ただ、昨今独立するフリーランサーは、単に組織勤めが嫌だからとかの理由で独立するケースも多く見受けられ、ハッキリ言って営業力のある方はとても少ないです。
まずは人との折衝が上手くなること、というのがどんな戦略を取るにしても重要課題となる方は本当に多いです。
そこのハードルを乗り越えた上で、今回ご紹介したランチェスター戦略を自身に当てはめて考え、事業継続性の向上、事業拡大の可能性向上を見出して頂けたら幸いです。